欠落の青春


登場人物
・佐々木(ささき)…明るく元気
・太田(おおた)…ツッコミ役
・内海(うつみ)…場の盛り上げ役
・藤堂(ふじどう)…インテリ系変人
・朝比奈(あさひな)…大人しい




開幕

舞台上には誰かと電話をしている様子の朝比奈。しかし照明はつけない。

朝比奈「……あのね、お願いがあるの」



朝比奈「……助けて」

朝比奈、はける。




空き教室で佐々木、太田、内海、藤堂の四人が談笑。
照明つける。

内海「ねぇねぇ、しりとりしよう!」

太田「唐突だな」

佐々木「じゃあ俺から! しりとり!」

内海「りんご!」

藤堂「娯楽」

太田「……苦痛」

佐々木「うわ、太田はこの時間のことを『苦痛』とか思ってるわけ?」

内海「けっ、薄情な奴だな」

藤堂「なんで太田くんを貶してるんですか……まぁ、気にしなさそうですが」

太田「いや、苦痛って思ってるわけじゃなくて! ただその単語が浮かんできただけで!」

佐々木「はいっ、太田の負けー」

太田「えっ、なんで!?」

内海「今までみんな、ちゃんとしりとりしてたから」

太田「はぁ? どこがだよ?」

佐々木「『苦痛』からの、『うわ、太田はこの時間のことを『苦痛』とか思ってるわけ?』」

内海「『けっ、薄情なやつだな』」

藤堂「『なんで太田くんを貶してるんですか。まぁ、気にしなさそうですが』」

太田「……っ、そんなのわっかんねぇよ!!」

佐々木「はーい、ってことで太田、ジュース買ってきて!」

太田「えっ、なんで」

佐々木「だって、しりとりに負けたから」

太田「負けたらジュースを買いに行く、とかいうルールあったけ?」

佐々木「いや、なかったよ。今作った」

太田「それ有効なの!?」

佐々木「俺がルールだ!」

太田「なんて横暴な……」

内海「ほら早くー! コーラ買ってきてー!」

藤堂「僕は、ジャスミンティーを」

佐々木「じゃあ、あえて水!」

太田「あー、はいはい、わかったわかった。買ってきますよ」

内海「Foooooooo! さぁすがっすねぇ!!」

佐々木「いってらっしゃーい」

太田、下手にはける。

内海「ねぇ藤堂、さっきから何を読んでんの?」

藤堂「内海くんに教える義理はありません」

内海「えー、それくらいいいだろ別に」

佐々木「内海、あまり食い下がるな。藤堂だって読書に集中したいだろう」

内海「んー、それもそっか。ごめんな藤堂、読書の邪魔して」

藤堂「いえ、気にしてません」

佐々木「藤堂は昔から、本の虫だもんな。確か小学生の頃……」

藤堂「えっ、小学生の頃!?」

内海「佐々木、もしかして」

佐々木「いや……小学生の頃はまだお前らと出会ってなかったな。記憶違いだったわ」

藤堂「……そうですか」

佐々木「でもなんか、お前らとは昔から一緒にいるような気がする」

藤堂「えぇ、僕も、そんな気がしますよ。とても」

内海「やっぱダメか……」

佐々木「ん? どうしたんだ?」

内海「なんでもないよ」

佐々木「そ、そうか」

太田、下手から登場。

太田「お望み通り、買ってきてやったぞー……って、なんか暗くないか?」

内海「俺達は燃え尽きたんだ。真っ白にな……」

太田「その割には髪の毛真っ黒だな。はい内海、コーラ」

内海「おぉありがと! これで生き返るぜ!!」

太田「単純な奴だな。で、藤堂がジャスミンティー」

藤堂「チッチッチ、jasmine-teaだ」

太田「知らねぇよ。で、佐々木が水」

佐々木「おぅ! ありがとな!」

太田「冷水機あるのに、水なんて普通 自販機で買わないでしょ」

佐々木「俺は『普通』なんて言葉には縛られないのさ!」

太田「そうか、そりゃいいことだな」

佐々木「おぅよ!」

太田「でさ、佐々木。バスの時間は大丈夫なのか?」

佐々木「ほぇ? ……えっ、嘘だろやばいじゃん!」

内海「おっと佐々木くん焦り出しました! バスが発車するまであと十分です! 解説の藤堂さん、佐々木くんは間に合いますかね?」

藤堂「そうですね。ここからバス停まで走れば間に合」

内海「おっとここで緊急事態です! なんと、佐々木くんの補助バックがありません! これは一体どういうことでしょうか!?」

藤堂「そうですね。教室にでも忘れてきたのではないでしょ」

内海「どうやら椅子の上に置いていたようですね」

藤堂「盲点でしたね」

佐々木「時間、教えてくれてありがとうな、太田。じゃあ、また明日!」

内海「ここで佐々木くん退場です! また明日ー!」

佐々木、下手へはける。

太田「……で、何があったんだ?」

藤堂「実は、佐々木くんが昔のことを思い出しかけて……」

太田「おお! それで、結果は?」

内海「……残念ながら」

太田「そう、か。やっぱ一筋縄じゃいかないな。佐々木の失った記憶を取り戻すのは」



藤堂「……去年の今頃から、ですっけ」

太田「うん……」

内海「なんで消えちゃったんだろうな。佐々木の記憶」

太田「さぁ。突然のことだったからな」

内海「過度なストレスとか? 佐々木、よく人の相談に乗ってるし」

藤堂「相談される側の人がストレス過多で記憶失うって、まるで木乃伊取りが木乃伊になるみたいですね」

太田「もしくは、記憶を失うほどショックな出来事があったか……」



内海「ま、何にせよ、佐々木には一刻も早く記憶を取り戻してもらいたいね」

藤堂「そうですね。佐々木くんは、僕達の大切な幼馴染ですから」

太田「全員が本当の意味で揃う日が、早く来るといいな」

内海「だね。じゃあ、俺達も帰ろっか」

藤堂「そうですね」

内海「あー、お腹空いた! 太田、唐揚げ食いに行こうぜ」

太田「あっ、うん」

内海「藤堂も行く?」

藤堂「僕は、塾があるので遠慮します」

内海「ふぅん、大変だね」

内海、藤堂、下手へはける。

太田「……一刻も早く、か……」

内海「太田ー! 先行くぞー!」

太田「わっ、待ってまってー!」

太田、下手へはける。
暗転。




朝比奈が席に着いたら、青ホリゾントと暗い照明、音楽。
佐々木、下手から登場。

佐々木「あれ、今日部活は?」

朝比奈「今日はないよ。佐々木は、今日も相談事?」

佐々木「そうそう。今日はA組の中田さん」

朝比奈「あー、あの水泳上手な人? 珍しいね」

佐々木「うーん、なんか、新しく部長に選ばれたけど、できるか不安なんだって」

朝比奈「なるほど。部長って、大変そうだもんね……」

佐々木「だよなー。でもさ、中田さんほど部長に適してる人、いなくない?」

朝比奈「うん。あの人、いつも笑顔で、周りにすごく気を配れるよね。尊敬する」

佐々木「本当そうだよ。もっと自分に自信、持っていいのにな」

朝比奈「……そう、だね……」

佐々木「あ、もうこんな時間。じゃあな」

朝比奈「ばいばい」

佐々木、下手にはける。
音楽、照明、フェードアウト。




舞台上では太田、内海、藤堂が談笑。
最初と同じ照明で明転。
佐々木、下手から登場。手には一冊のノート。

内海「おー佐々木、お疲れー」

佐々木「お疲れ。なぁ、これさ、俺の机の上に置いてあったんだけど、誰のものかわかる?」

佐々木、手に持ったノートを掲げる。

藤堂「さぁ……」

太田「なぁ佐々木、ちょっと貸してくれ」

佐々木「いいよー。でもなんで?」

太田「中見れば誰のかわかるだろ」

佐々木「あっ、確かに!」

内海「えっ、気づかなかったの?」

佐々木「いやぁ、人様のノートを勝手に見るのは少々抵抗がありまして・・・・・・」

藤堂「でも、持ち主を探す目的ならいいんじゃないでしょうか。このままでは埒が明きませんし」

内海「それもそうだね」

佐々木「太田ー、誰のかわかったか?」

太田「いや、全くわからな……ん?」

藤堂「どうしました?」

太田「ねぇみんな、ちょっと聞いてて」

太田「『このノートを見つけた人へ。
   これを読んでいるということは、僕はどこか遠くにいるのでしょうね。普通な
ら、探さないで下さい、と書くことでしょう。僕も最初は、そう書こうかと思い
ました。しかし、興味のあることにはまっしぐら、裏を返せば、興味のないこと
には目もくれない君達は、探さないで下さい、と書いてあったら探さないだろう
な、と思ったので、あえて書きませんでした。』」

佐々木「おぉ、俺たちのことよくわかってるじゃないか!」

藤堂「えっ、僕ら今、貶されてるんですよ!?」

内海「ほら、佐々木はそういう所鈍いから……」

藤堂「根っからのポジティブ思考ですか。人生、楽しそうですね」

佐々木「人生は楽しむものだよ!」

藤堂「うわぁ眩しい」

太田「続き読むよー。
  『そうです。僕は、君達に僕のことを探してほしいと思っているのです。理由は特
にありませんが、強いてあげるとするなら、落ち着いたから、です。詳しい事情
は省きます。きっとこの日記の中で、僕が消えた理由などはわかるでしょう。ヒ
ントはそこら中に散らばっています。見逃さないように、目を皿にして、探して
ください。それでは、君達と会えることを楽しみにしています。2018年3月』
……だって」

内海「は、はぁ……」

藤堂「それ、最近のものですね。2018年って書いてありますし」

佐々木「ってことは、この人が失踪してから、あんまり時間は経ってない、ってこと?」

太田「そうなるな。ノート自体も、古びた感じは受けないし……」

藤堂「でも、この人……仮にAさんとしますが、Aさんが失踪してから今まで、このノートはどこにあったんでしょうか?」

佐々木「確かに。人から人へ渡ってきたにしろ、どこかに落ちていたにしろ、こんな綺麗な状態を保つのは難しいよな」

内海「誰か一人が、大切に持ってたのかな?」

太田「というか、なんで佐々木のとこにあったんだ?」

佐々木「床に落ちていたのを俺のものだと思って、誰かが机の上に置いた、とか?」

藤堂「でも、なんで学校にあるんでしょうか」

内海「なんでだろう……」

沈黙。

太田「まぁ、とりあえず読んでみないか? 話はそこからだ」

藤堂「そうですね。今のままだと謎だらけですし」

佐々木「じゃあ読もうぜ」

一同、太田の元に集まる。


太田「……あああ暑苦しい! 離れろお前ら!!」

藤堂「えっ、だってこうしないと読めないじゃないですか」

太田「そんなの、誰か一人が代表で読めばいい話だろ?」

内海「おぉー、さすが太田。ナイスアイデア!」

藤堂「チッチッチ、Nice ideaだ」

太田「お前は一体なんなの」

内海「じゃあ読む人を決めよう。誰が読む?」

佐々木「はいはいはーい! 俺読みたい!」

太田「おぉ、じゃあ佐々木よろしく」

太田、佐々木にノートを渡す。

内海「ねぇ、古今東西しよう!」

太田「唐突だな。あれ、デジャヴ」

内海「じゃあ古今東西、動物の名前ー! ハシビロコウ!」

藤堂「イリオモテヤマネコ」

太田「犬」

内海「オオオオハシ!」

藤堂「ウッカリカサゴ」

太田「ちょっと待って! 出てくる名前特殊すぎない!?」

内海「なんだよ太田、今は古今東西中だぞ!」

太田「それでも突っ込まずにはいられなかったんだよ! お前らの微妙なチョイスに!!」

藤堂「なら、次はもう少し有名な名前を出していきましょう」

太田「あぁ、そうしてくれ。俺が浮いて仕方ない……」

内海「じゃあ改めて、古今東西、星の名前ー! メサルチム!」

藤堂「テクネチウム星」

太田「北極星」

内海「ウォルフ・ライエ星!」

藤堂「青色はぐれ星(ぼし)」

太田「アンタレス」

内海「黄色極超巨星(おうしょくごくちょうきょせい)!」

藤堂「ブラックウィドウパルサー」

太田「一回目よりもマニアックだよね!?」

藤堂「えっ、結構有名だと思いますが……」

太田「いやいや、絶対マイナーだって! 高校生100人に聞いたら99人が知らないって答えるヤツばっか出してたよお前ら!!」

内海「そうか? ねぇ佐々木、黄色極超巨星って有名だよね?」

佐々木「ん? あぁ、あれね。逆に知らない人いるの?」

太田「俺がおかしいのかな……」

藤堂「そういえば、佐々木くんはその日記、読み終わったんですか?」

佐々木「まぁ、ザッとだけどね」

太田「なんか、気づいたこととかあるか?」

佐々木「それなりにあるよ」

内海「話してはなしてー」

佐々木「これを書いたAさんは、どうやら高校生みたいだ。何年生かはわからないけど、時々『高校』って単語が出てくるから、多分そうだと思う。……あまり、学校には行けてないようだけどね」

内海「それ書いたの、男子だよね?」

佐々木「いや、わかんない。一人称は『僕』だけど、言葉遣いはどことなく女らしい」

内海「そっか。まぁ、文章だけで性別なんてわかんないよね」

佐々木「それで、こっからが俺の感想なんだけど……決定的な根拠はないし、確固たる自信もない。この日記に信憑性もなければ、いたずらの可能性も拭えない。けど、そうだとしても、俺は……この日記の作者、Aという人物を探したい。みんなは、どう思う?」

内海「俺は賛成! 乗り掛かった船、ってやつだ!」

藤堂「僕も賛成です。不謹慎ですが、謎解きのようで少し興味が湧きました」

太田「俺も。佐々木なら絶対、探そうって言うと思ってたし」

佐々木「みんな……ありがとう!」

内海「じゃあさ、その日記、一日一人ずつ読んで回して、一周したら集まろう。そっちの方が効率的だし!」

佐々木「そうだな。じゃあ、今日は俺が持って帰っていいか?」

太田「あぁ。次は、俺が読んでいいか?」

内海「いいよー。じゃあ俺、太田の次ー!」

藤堂「僕が最後ですね」

佐々木「よっしゃ! じゃあ、日記の作者Aを探し隊、結成だー!」

太田/内海/藤堂「「「おー!!」」」

佐々木「じゃあ俺、先に帰るわ。また明日なー!」

内海「ばいばーい」

佐々木、下手にはける。

藤堂「日記、ですか」

内海「ん? どうかした?」

藤堂「あぁ、少し……夏休みの宿題で、一言日記ってあったなぁ、と思い出しましてね」

内海「あー、あったね! なっつかし~」

太田「内海は毎年、31日になってから書いてたよな」

内海「あれさ、簡単そうで結構大変だよな。毎日違うこと書かなきゃだし」

太田「そういや、藤堂は小学生の頃の夏休み、毎日家にいたよな。なんて書いてたんだ?」

内海「えっ、海に行ったり映画観に行ったりしてなかったっけ!?」

藤堂「そんなの嘘八百ですよ。第一、僕は父が仕事で忙しいので、どこにも連れていってもらったことはありません」

太田「そっか。藤堂は、父子家庭だったな」

内海「え、てか待って、嘘ついてバレなかったの!?」

藤堂「僕が行ったと言えば行ったことになるんですよ」

内海「うわ、ずるい……」

藤堂「ずる賢いと言ってください」

太田「……なぁ、少し、思ったんだけど」

藤堂「なんですか?」

太田「もし、佐々木が日記をつけていたら……記憶は失われなかったのかな」

内海「……ん? どういうこと?」

藤堂「日記を書いていたら、それを読み返して、思い出すことができたかもしれない、ということですよね?」

太田「そうそう。それに、俺達がなんらかの方法でその日記を見ることができたら、佐々木が記憶を失った原因もわかっただろうし」

内海「おー、確かに」

藤堂「まぁ、後の祭りですけどね」

内海「あの日記を書いたのが、佐々木っていう可能性は?」

藤堂「ないでしょうね。書くメリットが思いつきません」

内海「単なるいたずらとかは?」

藤堂「それにしては、手が込みすぎだと思います」

内海「んー、それもそっか……」

太田「この日記を書いたのが、佐々木だったらよかったのにな」

内海「本当そうだよ。そして記憶が戻ったら、全てが元通りに……」

太田「……は、ならないのか」

佐々木、下手から走って登場。

佐々木「忘れ物したああああああああ!!」

内海「うおおおおおおおびっくりした!!」

佐々木「あれ? お前らまだ残ってたのか。下校時刻、過ぎてるぞ?」

太田「えっ、うわマジだ! 急がないと出れなくなる!」

藤堂「塾に遅れてしまう!!」

内海「俺は何もない!」

太田「家に帰れなくなるけどいいのか?」

内海「それは嫌だ! 急ごう!」

四人、大慌てで下手へはける。
暗転。




舞台上には藤堂。
最初と同じ照明で明転。
内海、下手から登場。

内海「よっ。はい日記。藤堂で最後だよね?」

藤堂「そうですよ」

内海「おっけー」

内海、下手へはける。

藤堂「……2月21日。今日は、空が綺麗だった。2月22日。今日は、少し勉強をした。2月23日。今日は、朝から散歩をした。……至って、普通の日記ですね。学校に来れなくなった理由なども書いてありませんし……」



藤堂「……3月2日。今日は、家族と山登りをした。3月3日。今日は、友達の誕生日だった。3月4日。今日は、昔の夢を見た。空が赤く染まった頃、教室で、大切な友達を怒らせてしまった日のこと。彼は僕に『嫌いだ』と言った。『周りからの評価に怯え、出来もしないのに断れなくて、自分のことしか、考えてない所、が嫌い、だ』と……」

藤堂「こ、これは……」

スポット消す。




舞台上には藤堂と朝比奈。
青のホリゾント、少し明るい照明は音楽と共にフェードイン。

朝比奈「ねぇ藤堂。お願いがあるんだけど……」

藤堂「何ですか?」

朝比奈「この資料のデータを打ち込まなきゃなんだけど、私、やり方わかんなくて……藤堂は、できる?」

藤堂「できますよ」

朝比奈「えっと、じゃあ、お願いしてもいいかな?」

藤堂「別に、これくらい構いませんよ」

朝比奈「ほ、本当にいいの? 結構大変だよ?」

藤堂「そう思うんなら、頼まなければいいでしょう」

朝比奈「そ、そうだけど……私がするより、藤堂がする方がいいかなって思って……」

藤堂「……なんなんですかさっきから。煮え切らない態度をとって」

朝比奈「ご、ごめん」

藤堂「この際なので言わせてもらいますが、前々から、貴方の態度が気に入りませんでした。周りを気遣っているつもりなのかもしれませんが、それは、自分が傷つきたくないからじゃないですか?」

朝比奈「そ、そんなこと」

藤堂「第一、貴方は周りからの評価に怯え、出来もしないのに断れなくて、自分の事しか考えてないですねよ? そういう所が、僕は嫌いです」

朝比奈「え……」

藤堂「優しさと弱さを履き違えてはいけない、ということは、知っておいた方がいいと思いますよ。それでは」

藤堂、下手にはける。
朝比奈、立ち尽くす。
照明、音響、フェードアウト。




舞台上には太田。
最初と同じ照明。
内海、下手から登場。

内海「おっつー……って、あれ? 藤堂は?」

太田「さぁ? 何か頼まれ事?」

内海「えー、あいつに限ってそれはないだろ。頭は良いけど愛想はないし、大体無表情で何考えてるかわかんないし、愛想はないし、愛想はないし」

太田「愛想がない以外にいう事はないのか?」

内海「……頭以外、何も良くない?」

太田「どうして疑問形なんだ……」

内海「他にも良い所あるかもなって思って」

太田「例えば?」

内海「……」

太田「待て、そこで黙ると藤堂に失礼だ。流石に可哀想になってきた」

内海「真面目に考えてちゃった。てへっ☆」

太田「お前が言っても可愛くないから。てか、内海がこんなに藤堂をコケにするって珍しいな。いつもは逆だろ?」

内海「いや、半々だよ。コケにしつつされつつ」

太田「仲良いんだな。ケンカでもしたのか?」

内海「いや、ケンカはしてないよ。……まだ、ね」

太田「どういうことだ?」

内海「俺の言う言葉に大した意味はないって、幼馴染だからわかるよね?」

太田「そうだな。お前バカだもんなぁ」

内海「えっ、めっちゃストレートに言われた……」

太田「アッハッハ」

内海「あっ、一人いた」

太田「何が?」

内海「藤堂に頼み事する人」

太田「話がすごい戻ったな。誰だ? 先生とかは無しだぞ」

内海「違う違う。……朝比奈だよ」

太田「あぁ、そうだったな」

内海「朝比奈もよく頼られてたからな。一人でできない時は、藤堂に頼んでたみたいだね」

太田「藤堂も、幼馴染だからか、快く引き受けてたよな」

内海「『僕の時間が取られるー!』って俺に愚痴ってたけどな」

太田「ハハッ、想像できるわ。それでトラブルとかあったろ?」

内海「あったあった。確か、藤堂の虫の居所が悪かった時で……」

藤堂、下手から登場。

藤堂「こんにちは」

内海「おー、藤堂やっときた」

藤堂「さっきからくしゃみが止まらないんですけど、僕の噂でもしてました?」

内海「してたよー。藤堂の襟っていつも立ってるよなって」

藤堂「えっ!?」

内海「冗談だよ」

藤堂「そうですか……」

太田「……気のせいか」

藤堂「何か言いましたか?」

太田「いーや、何も」

藤堂「はぁ、そうですか。あ、日記です」

太田「あぁ、ちょっと貸して」

藤堂「どうぞ」



内海「佐々木、来るの遅いな」

太田「また何か頼まれ事か、相談事じゃないか?」

内海「そうだね。あいつは何かと頼られるもんな」

太田「小学生の時も、六年間ずっと学級委員長じゃなかったっけ?」

内海「そうそう! 流石にあれは笑ったわ!」

太田「もう最後の二年間とか、自分で立候補してたもんな!」

内海「まぁ立候補しなくても、選ばれてたけどな!」

太田「ハハッ、確かに」



内海「……なんで、こんな楽しい思い出も忘れちゃったんだろうな」

太田「さぁな。なにか分かればいいんだろうけど」

藤堂「あの……」

内海「ん? なんだ藤堂」

藤堂「その……思い出さなくても、いいんじゃないでしょうか」

太田「……は?」

藤堂「だから、その……無理に、佐々木くんが過去のことを思い出す必要はないんじゃないでしょうか」

内海「えっ、なんで?」

藤堂「過去の記憶って、必ずしも良いものばかりじゃないんですよ。思い出したくもない出来事とか、目も当てられない失敗とか、そんなことも沢山あるんです」

内海「あー確かに。先生に怒られた記憶とかは消したいなぁ」

藤堂「そして、記憶は何度も思い出すことで、より鮮明に残るんですよ。特に嫌な思い出は、折に触れて思い出しやすいから、余計、色濃く刻まれるんです。もし、佐々木くんが記憶を失った原因が、忘れたいほど嫌な出来事だったら……」

太田「忘れたままの方が、幸せなんじゃないか、ってこと?」

藤堂「そうです」

内海「なるほどねぇ。そっか、そういう場合もあるのか」

藤堂「それに、今のままでも佐々木くんは楽しそうに見えますし、生活にひどく支障をきたしているわけでもありません。だから、いつか自然に思い出すのを待って」

内海「ねぇ、それさ、本当に思ってる?」

藤堂「……え?」

内海「過去ばかりに囚われないで、未来に目を向けようってことを言いたいんだよね、藤堂は。でも、それは言い換えたら、過去を切り捨てるってことだよね」

藤堂「……何が、言いたいんですか」

内海「お前は、朝比奈を、忘れようとしている」



藤堂「ど、どうしてここで、朝比奈さんの名前が出てくるんですか。彼女は、一年前に学校に来なくなったじゃないですか」

内海「確かに朝比奈は、一年前に俺らの前から姿を消した。……お前のせいでな」

太田「えっ……藤堂?」

内海「3月4日の日記。『今日は、昔の夢を見た。空が赤く染まった頃、教室で、大切な友達を怒らせてしまった日のこと。彼は僕に「嫌いだ」と言った。「周りからの評価に怯え、出来もしないのに断れなくて、自分のことしか考えてない所が嫌いだ」と。確かにそうだ。僕は、自分の事を一番に考えてしまっていた。いや、今でもそれは変わらない。だから、逃げたのだ。……原因は、これだけではないけれど』」

太田「その日の日記が、どうしたんだ?」

内海「この『大切な友達』って、お前だろ?」

内海、藤堂を指差す。

藤堂「どうして、僕だとわかるんですか?」

内海「去年の十月頃……朝比奈が学校に来なくなる二日前の夜、朝比奈から電話があった。『弱くて自分勝手な私のせいで、藤堂を怒らせてしまった』って。そこで、その日あったことを全部話してもらった。だから俺は、これを読んだ瞬間にわかったんだ」

太田「えっ、ということは……」

内海「あぁ、この日記を書いたのは……朝比奈だ」



藤堂「……あの日のこと、知ってたんですね」

内海「あぁ。色々あって有耶無耶になってたけど、忘れたことはなかった。彼女がどれほど傷ついたかを、何度もお前に言おうと思った。だけど、あの夜、朝比奈は言った。『変わりたい。変わって、藤堂に謝りたい。そして、また藤堂と仲良くなりたい』と。その言葉を信じて、俺は何も言わなかった。もしかすると、藤堂も反省しているんじゃないのか、って期待してた。だけど……違ったみたいだな」

藤堂「いや、違いません」

内海「違う!」

藤堂「違わない!」

内海「どこがだ!」

佐々木、下手から登場。

藤堂「俺だって、朝比奈を傷つけたいわけじゃなかった!」

内海「……え?」

藤堂「俺は、朝比奈が羨ましかった。学力、運動神経、友達……母親。俺にないものを全て持っていた。幼い頃から一緒にいたはずなのに、どうしてこんなに違うのだろうと悩み、妬んだ。弱いのも、自分のことしか考えていないのも、俺の方だってわかってる。でも、朝比奈がいなくなった今、俺はどうしたらいいのか、わからないんだ……」

太田「藤堂……」

佐々木「あさ、ひな?」

太田「えっ、佐々木っ!? お前、いつからそこに……」

佐々木「藤堂、あさひなって……」

内海「……佐々木、本当に何も思い出せないの?」

佐々木「思い出す? 何をだ?」

内海「みんなで、鬼ごっこをしたこと。海に行ったこと。かまくらを作ったこと。桜も、花火も、紅葉も、雪も、幾度となく見たこと。幼い頃からずっと、俺達は一緒にいること」

佐々木「な、何を……」

藤堂「そして、その中に朝比奈がいたこと」

佐々木「……あさ、ひな」

内海「ねぇ、佐々木、思い出してよ。俺達との過去を……朝比奈のことを」

佐々木「朝比奈……」

照明、佐々木にスポット。

佐々木「そうだった。俺達は、四人じゃなくて五人だった」

太田、内海、藤堂は上手にはける。
朝比奈、上手から登場。机に突っ伏す。

佐々木「俺、太田、内海、藤堂、朝比奈。五人は小さい頃から一緒で、本当に仲が良かった。このままずっと一緒にいるのだろう、そう思いながら毎日をすごしていた……あの日までは」

佐々木のスポットを消す。
佐々木、下手にはける。
青のホリゾント、照明をつける。
佐々木、下手から登場。

佐々木「……朝比奈?」

朝比奈、佐々木の呼びかけに反応して起きる。

朝比奈「あ、佐々木……」

佐々木「具合でも悪いのか? それとも、悩み事か?」

朝比奈「いや……なんでもないよ」

佐々木「そ、そうか」

朝比奈「それより、佐々木は今日も相談事?」

佐々木「うん。今日は、B組の宮崎くん」

朝比奈「あー、あのバトミントン部の人?」

佐々木「そうそう。なんかさ、ペアと上手くやれてないんだって」

朝比奈「そうなの?」

佐々木「らしいよ。宮崎くんは部内で一番手の人とペアを組んでるんだけど、それがプレッシャーになってシャトルに触りにいけないんだって。だから、ペアの人にいつも迷惑をかけてしまうって言ってた」

朝比奈「そうなんだ」

佐々木「だから、失敗を恐れないでって言った。誰しも完璧じゃない。どこか欠落している。その欠落部分を埋めるのが練習で、補うのがペアの役割。だから、どんどん失敗してどんどん頼っていいと思う。大切なのは、最後の大会で笑って終われるかどうかだから」

朝比奈「うん、そうだよね……すごいよね、佐々木は」

佐々木「え、何が?」

朝比奈「ほら、私と違って佐々木はさ、周りから信頼されて、相談事とか乗って、誰かを元気にしてるじゃん? 私なんて、自分が傷つかないようにってことしか考えてないから、すごいなって思って……」

佐々木「それは買い被りすぎだよ。朝比奈にだっていい所はいっぱいあるんだから、そんなネガティブに捉えないで、もっと明るい方向に考えようぜ」

朝比奈「……それが出来たら、どれだけよかっただろう……」

佐々木「ん? なんだって?」

朝比奈「なんでもないよ」

佐々木「そっか……って、それ今日二回目だな」

朝比奈「え、そうだっけ?」

佐々木「うん。さっきも『具合悪い?』って聞いたら『なんでもないよ』って返されたし……なんかあったのか?」

朝比奈「いや、本当になんでもないよ」

佐々木「嘘だな。絶対なんか隠してるだろ」

朝比奈「なにも隠してなんか」

佐々木「朝比奈は、遠慮してるのか知らないけど、自分の意見を言わない時が多いよな。まぁ俺だって、色々考えて言いたい事言えない時はある。でも、もっと自分に自信持って、思ってる事は伝えていった方がいいぞ。嫌な時は嫌って言いな。断らないのは、優しさじゃなくて弱さだから」

朝比奈「……わかってるよ……」

佐々木「え?」

朝比奈「そんなの、わかってるよ!」

佐々木「えっ、朝比奈?」

朝比奈「嫌な時に嫌って言えないのは、相手に嫌われるのが怖いからだよ! 自分の正直な気持ちを伝えて相手を不快にさせるくらいなら、自分が我慢すればいいんだって思ってるの。それが弱さだってことくらいわかってる。でも、今更どうすればいいのかわからない。こんな生き方しか知らない私は、どうすればいいのかわからないの!」

佐々木「あさひ」

朝比奈「優等生の君には、私の気持ちなんてわかんないだろうけど!」



朝比奈「あっ……ごめん」

朝比奈、下手へはける。
佐々木、立ち尽くす。
暗転。




佐々木にスポット。
佐々木のセリフの間に、太田、内海、藤堂、上手からスタンバイ。

佐々木「それから、朝比奈は学校に来なくなってしまった。最初俺達は、数日で戻ってくると思っていた。しかし、季節が変わっても、学年が変わっても、朝比奈は帰ってこなかった。朝比奈が消えたその日、彼女が奪っていったかのように、俺の記憶が消えた。太田も、内海も、藤堂も、何も言わなかった。それから、一年が経った」

スポット、フェードアウト。
照明、つける。

佐々木「これが、朝比奈が消えた日の出来事」

太田「佐々木、お前……」

佐々木「うん。記憶、取り戻したよ。ごめんね、たくさん迷惑かけて」

内海「全然! それより、佐々木の記憶が戻ってよかったよ」

藤堂「えぇ、そうですね」

太田「それで、どうする?」

佐々木「どうするって、何が?」

太田「朝比奈に、会いに行くかどうかってこと」

佐々木「あ、あぁ……」

藤堂「……僕、会いたいです。会って、あの日のことを謝りたいです」

内海「俺も、逆に会いに行かない理由がなくない?」

太田「佐々木は?」

佐々木「……俺も、会いたい!」

太田「よし、じゃあ会いに行くか!」

暗転。椅子、机、片付ける。椅子と机は1セット舞台後方へ(朝日奈の勉強机)。
下手側に布団を敷く。




照明、最初より照らす範囲を狭くする。
朝比奈、布団にくるまる。
明転。

佐々木「入って、いいか?」

朝比奈「……どうぞ」

四人、上手から登場。

佐々木「朝比奈、久しぶり」

朝比奈「うん、久しぶり」

佐々木「あの……げ、元気だった、か?」

朝比奈「……そこそこ、かな。みんなは?」

内海「俺たちは、元気だったよ」

朝比奈「そっか」

太田「……朝比奈がいなかった寂しさを除いては、な」

朝比奈「…………ごめんね」

佐々木「違っ、朝比奈が謝ることじゃない!」

朝比奈「えっ」

佐々木「一年前、俺は、朝比奈の気持ちも考えず、偉そうなことを言って、朝比奈を傷つけた。誰かを傷つけることなんて初めてで……いや、誰かを傷つけたと自覚したことが初めてで、俺は、怖くなった。今まで、知らず知らずのうちに傷つけてしまった人がいるのではないか、その人は今でも傷ついたままではないのだろうか。そんな考えが頭を埋め尽くして……俺は、記憶を失った……ふりをした」

太田「えっ、それって」

佐々木「あぁ。実は、半年くらい前に記憶が戻ったんだ。お前達にそのことを言おうかと思ってたけど……言い出せなかった。現実から、朝比奈から、目を逸らして、逃げ続けた。半年が過ぎても、俺は弱いままだった」

内海「……佐々木……」

佐々木「でも、この日記を読んで気づいたんだ。あぁ、朝比奈は、変わったんだなって。自分が一番辛いはずなのに、過去を乗り越えて、俺達に会う決心をした。そんな思いを、この日記という形で突きつけられて、逃げられるはずないよな。そこでやっと俺は、一歩踏み出した。朝比奈のお陰だ。本当に、ごめんなさい。そして、ありがとう」

朝比奈「そんな……私は何もしてないし、何も変わってないよ。逃げ出したあの日と変わらない、今でも臆病なまま。それに、あれは佐々木が謝ることじゃない。私の心が弱いからそうなっただけで、どちらかと言わなくても、私が謝らなきゃいけないことだ。ごめん、佐々木」

佐々木「そんな、朝比奈が謝ることじゃないよ……」

藤堂「そうですよ。この原因を作ったのは、他の誰でもない、僕なんですから」

朝比奈「藤堂?」

藤堂「僕は一年前、貴方にとても身勝手なことを言って、貴方を深く、深く傷つけました。自分のことしか考えてないは、僕の方です。そして、佐々木くんと同様に、僕もまた、貴方から目を逸らし続けていました。あまつさえ、貴方をなかったことにしようともしていました。でも、内海くんに言われて、初めて気づきました。貴方の強さと……優しさに。消えない傷をつけてしまったこと、許さなくて構いません。僕のことを、一生恨んでも構いません。本当に、申し訳ありませんでした」

朝比奈「……藤堂、私、あの時すごく傷ついた」

藤堂「……すいません」

朝比奈「でもね、やっと藤堂の本音が聞けたと思って、傷ついた半面、嬉しかった。もっと、藤堂と仲良くなりたいと思った。向き合いたいと思った。強くなれる、きっかけをくれた。だから、ありがとう」

藤堂「……貴方は本当に、どこまでも、優しいんですね」

朝比奈「内海もありがとうね。あの時、話聞いてくれて」

内海「おぅ、いいってことよ」



佐々木「そういえば、あの日記は朝比奈が書いたんだよな?」

朝比奈「あっ、それさっきも言ってたけど、なんのことなの?」

内海「えっ……どういうことだ?」

太田「あぁ、あれは、俺が書いたよ」



佐々木「えっ、太田が!?」

内海「何のために!?」

太田「実は少し前、朝比奈から電話があったんだ。『もう一年が経ってしまった。このままだと一生みんなに会えなくなってしまう。また前のように戻りたいけど、今更合わせる顔がない。助けてほしい』ってな」

朝比奈「それで、一年前にあったことを全部話したの。そしたら太田が『俺に任せろ』って言うから、どうするのかなって思ったけど、まさか日記とは……」

太田「朝比奈、夏休みの課題の一言日記、ちゃんと毎日つけてただろう? それで、朝比奈なら日記を書いててもおかしくないなって思ったんだ。それに、日記だったらその日あった出来事も、その時自分が感じたことも、自然に書けるからな」

佐々木「おぉ、結構考えてたんだな」

太田「まぁ、佐々木にも、早く記憶を取り戻してほしかったし」

佐々木「太田……」

内海「ねぇ太田、一個質問いい?」

太田「なんだ?」

内海「太田は日記を、朝比奈が書いたように見せたかったんだよね。じゃあ、なんで一人称を『私』じゃなくて『僕』にしたんだ?」

太田「簡単にわかったら、面白くないだろ?」

内海「ってことは、俺達は太田の手のひらの上で転がされてたってこと?」

太田「言い方めちゃくちゃひどいな……」

藤堂「仕方ないですよ、太田くんは魔性の男ですから」

太田「それ普通『魔性の女』じゃないのか」

内海「つーか、太田と佐々木の演技力高くね!? 半端ないって!」

藤堂「僕達、あっさり騙されてしまいましたよ……」

内海「もう二人の事信じられねぇ……藤堂、朝比奈、これからは三人で仲良くしようぜ」

佐々木「おぉ、目の前でハブる宣言されたの初めてだ」

朝比奈「うん! 三人での、再出発だね!」

太田「朝比奈サン!?」

藤堂「もちろん、冗談ですけどね」

太田「よかった。冗談じゃなかったら、俺達泣いてたよ」

佐々木「いや、俺は、泣かないぞ」

太田「えっ、薄情じゃないか?」

佐々木「家に帰ってから泣き喚く」

太田「俺よりもダメージ大きかったな!」

朝比奈「……よかった。また五人で笑えて」

佐々木「あぁ。変わらないよ、この五人は」

音楽、流れる。

内海「そうだ! しりとりしよう!」

太田「また唐突だな」

佐々木「じゃあ俺から! しりとり!」

内海「リッチ!」

藤堂「チッチッチ、richだ」

太田「本当にお前はなんなわけ!?」

佐々木「あー、また太田の負け」

内海「本当に太田は学習しないな」

朝比奈「太田、しりとり弱いね」

太田「めっちゃ攻められるんだけど……つか、朝比奈はこの前のこと知らないだろ?」

朝比奈「この前のことって?」

佐々木「いや太田がさ……」


五人、楽しく談笑をする。

閉幕
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