Colors.

登場人物(読み方)
 赤(あか)……大学二年生 19歳 唯一の常人 理学部
 青(あお)……大学二年生 19歳 冷静な変人 経済学部 経営学科
 黄(きい)……大学一年生 18歳 失礼な変人 人文学部
 緑(みどり)……大学一年生 18歳 穏やかな変人 農学部 獣医学科
 白(しろ)……大学二年生 19歳 ナルシスト=変人 経済学部 経済学科


舞台は赤の部屋(赤は実家暮らし)
赤の誕生日まであと30分弱
舞台上には、ぼーっとする赤、漫画を読む黄、飾りつけをする緑の三人



赤「なぁ黄、今何時何分?」

黄「えっ!? ……23時35分っす」

赤「うわー、あと25分じゃん」

黄「赤先輩、明日で何歳になるんですっけ?」

赤「二十歳だよ。は・た・ち」

黄「おー! おめでとうございまーす!」

赤「そのセリフは日付が変わってから言えよ」

黄「それもそうっすねー」

 青、皿をもって上手から登場

赤「ずっと、子どもでいたかった」

青「……まだ、子どもだろ」

赤「そうだけどさ」

黄「つか、いつまでが子どもなんっすかね?」

赤「20歳未満?」

黄「へぇ~」

赤「だって、20歳になったら酒飲めるし。あと、成人式あるじゃん」

黄「あー、なるほどっす」

赤「黄は?」

黄「俺的には、18歳未満、っすかね」

赤「へぇ、なんで? 法律が変わるからか?」

黄「まぁ、それもありますけど。18歳になったら、なんか自由になった気がしません?家を出て一人暮らし始めたりとか」

赤「あー、わかる。いろんなことから解放された感じがするよな」

黄「そうっすそうっす! それで俺、大人って自由だと思ってるんっすよ!どれだけゲームしても、家に帰るのが遅くなっても、部屋を散らかしても、怒られねーし!」

青「その代わり、果たさなきゃいけない義務がたーくさんあるけどな」

黄「うっ、そうっすよね……じゃあ青先輩は、どう思いますか? 逆に」

青「俺は、働き始めるまでだと思うな。それまでは、経済的にも親に面倒見てもらってるし」

赤「おー、なんか説得力あるな」

黄「さすが、定期考査は常に学年一位だった青先輩! 言うことが違う!」

青「ま、お前らとは格が違うからな」

赤「やっぱ前言撤回」

黄「さすが、人気者ランキング万年最下位の青先輩。言うことが違う」

青「いやそんなランキングねぇだろ」

赤「とりあえず今のところ、子どもの基準は、20歳未満、黄が18歳未満、青が働き始めるまで、だな」

黄「バラバラっすね」

赤「意外となー。ちなみに緑は?」

緑「ん? 呼びましたぁ」

赤「あぁ、呼んだけど」

緑「なんですかー?」

赤「緑はさぁ、いつまでが子供だと思う?」

緑「えぇ? うーん……」

青「ほら、緑を困らせるな」

黄「そうっすよ! そんな答えにくい質問、急にしないでください! 迷惑です!」

赤「うーん……そうなんだけど、黄に言われると腹立つなぁ」

黄「歯形と海苔?」

赤「腹立つなぁ!」

黄「まーまー、そんなに怒らないで」

緑「あ!」

赤「うわ! びっくりした」

緑「なんとなく出ましたよー。さっきの、赤先輩の質問の答え」

黄「おー! 何なにー?」

緑「一生、です」

赤「……一生?」

黄「どういうこと?」

緑「んー、簡単に言うとぉ、僕たちは大人になれない、ってことです」

赤「まさか、不治の病に侵されているとか!?」

緑「あ、そういうことじゃないです」

青「怪しい宗教の考えで、とか?」

緑「そういうことでもないです」

黄「もしかして、黒ずくめの人たちに薬飲まされたとか!?」

赤「真実は!」

赤/黄「「いつも一つ!!」」

緑「それはもっと違います」

青「じゃあ、どういうことだ?」

緑「えっと、あくまで僕の考えですけどぉ、大人になるって『二本の足で立つ』みたいなことだと思うんですよ。自分の力で地を踏みしめるというか」

赤「黄、いまの理解できた?」

黄「ボク、イマ、ミドリガ、ナニヲイッタカ、ワカラナカッタ」

赤「だ、そうだ。緑、もっとわかりやすく言ってくれ」

緑「そうですねぇ……僕は、ただ年を重ねるってことが、大人になるってことじゃないと思うんですよぉ。20歳だから大人だーとか、16歳だからまだ子供だーとか、そんなのはないと思いまぁす」

赤「なるほど。それで?」

緑「それでぇ、つまり『大人』って『精神的に自立している人』のことだと思うんですよ。自分の足で、自分ひとりの力で立って歩くことができて初めて、『大人になる』んじゃないですかねぇ」

黄「あぁ! なるほど!」

青「……あ、そういうことか」

赤「え、お前、今わかったのか?」

青「当たり前だ。俺の国語力の無さを知らないのか!?」

黄「えっ、国内旅行の楽しさ?」

赤「違う! 国語力のな・さ!」

黄「NASA……? あぁ、ロケット!」

赤「それはアメリカ航空宇宙局!」

青「また話が脱線してしまったな」

黄「そうっすよー! 誰だよNASAなんて言ったやつは!」

赤「お前だろ」

青「お前だな」

緑「黄くんだよ」

黄「くっ、四面楚歌とはこういうことか……」

赤「あっ、でもさ緑、『精神的に自立すること』が『大人になる』っていうことだったら、大半の人はいつか大人になれるんじゃないのか?」

緑「んー、そうなんですけどぉ……」

青「けど?」

緑「誰かに、何かに頼らず生きている人って、そうそういないんじゃないですかねぇ」

赤「……言われてみれば、そーかも」

青「両親とか、友達とか、何かを心のよりどころにしている人が大半だよな」

黄「人は一人では生きていけない、ってことっすね。緑、いいこと言うじゃん!」

緑「ありがとー」

赤「自立する、ね……」

黄「赤先輩以外は、ある意味自立してますよね?」

青「まぁ、親元離れて、身の回りのこと、全部自分でやってるしな」

緑「お金も、仕送りはあるけどバイトやって稼いでますし~」

赤「俺は大学から家が近かったからなぁ……あ、バイトで思い出した。黄が前言ってたやつ、どうなったんだ?」

黄「え? あぁ、バイトの店長っすか? また大量に発注したんっすよー」

赤「またかー。今度は何だ?」

黄「お好み焼き味のきのこの山!」

青「は?」

黄「なんか、娘さんが買ってきたやつ食ってハマったらしくて『まじ美味ぴだったからちょっぱやでポチッたわ! 宣伝ヨロ~☆』って言われたんっすよね~」

赤「うわぁ……パリピだな……」

黄「ちなみに40代のおっさんっす」

赤「嘘だろ!?」

緑「心の若さは大切ですよねぇ」

赤「いや、若さとか、そういう問題じゃないよね!?」

青「それで、どうしたんだ?」

黄「それで、キャンペーンしたり、従業員が毎日一人ひと箱ずつ買ったりして、なんとか完売しました」

青「頑張ったな」

赤「黄は、それ食ったのか?」

黄「食いましたよー。流石に毎日はきついんで、三日に一度は緑にあげました」

緑「うんうん。あれおいしかったよねぇ」

黄「えっ」

緑「え?」

黄「まずかった、よね……?」

緑「おいしかった、よね……?」

   間

赤「……まぁ、味覚は人それぞれだから」

緑「そうですねぇ。辛いのが好きな人もいれば、甘いのが好きな人もいますし」

黄「きのこの山が好きって人もいれば、たけのこの里が好きって人もいるしね!」

青「そうだそうだ。ちなみに黄はどっち派だ?」

黄「きのこです!」

青「は?」

黄「え?」

青「お主……きのこの民だったのか……」

黄「いかにも……そなたはたけのこの民か?」

青「いかにも」

黄「よろしい。ならば戦争だ!」

赤「くだらないことで喧嘩はじめんなよ!」

緑「あ、ところでぇ、明日のパーティーに白先輩は来ないんですか?」

青「白か? どーせあいつのことだから鏡に向かって『鏡よ、鏡。世界で一番美しいのは誰だ? え、僕? やだなぁ、そんな当たり前のことわかってるよ☆』って感じで、時間も忘れて話しかけてんだろ」

緑「それはさすがに……ありそうですね」

黄「俺、呼んできましょうか?」

赤「あぁ、うん、よろしく」

緑「いってらっしゃ~い」

 黄、上手にはける
 緑と青は準備
 赤は無言で机上を見つめる

赤「なぁ、緑」

緑「は~い、なんですかぁ?」

赤「なんで緑は『大人になること』が『自立すること』だと思うんだ?」

緑「え~、それさっき言いませんでしたっけぇ?」

赤「あぁ、そういう意味じゃなくて……大半の人はさ、年齢で『大人』と『子ども』の区別をつけるじゃん? なのに緑は、なんて言うんだろう……人間の本質?みたいなので大人と子供の区別をつけるんだろうなぁ、って思って」

緑「あー、こう考えるようになった理由ですかぁ?」

赤「そうそう」

緑「そうですねぇ……ひとつだけありますよぉ」

赤「一つだけ?」

緑「はい。先輩、『子供大人』って言葉、聞いたことありますかぁ?」

赤「こどもおとな?」

青「あ、それ聞いたことある。たしかコナン君の逆バージョンみたいなやつじゃなかったっけ?」

緑「そうです。見た目は大人、頭脳は子ども、な人たちのことです」

赤「あー」

緑「僕、そういう人たちのことを『大人』って呼ぶことに違和感があるんですよぉ。わがままを突き通したりー、自分が有利でいられるようにズルしたりー」

青「『大人げない』って感じるよな」

緑「ですねぇ。でもどっちかって言うと、『年甲斐もない』の方がニュアンス的には近いですねぇ」

赤「大して変わらなくないか?」

緑「そうですけどー、『大人』って曖昧な境界より、『年』っていう明確な境界の方が、わかりやすくないですか?」

赤「あー、まあな」

緑「でしょー?」

青「お前、意外と細かいな?」

緑「えー、そーですかぁ?」

青「あぁ、なんかぼーっとしてて流されやすそうなのに、意外とこだわりとかあるんだな」

緑「あぁ、なんか前にも言われました。『吹けば飛びそうなのに、命綱はしっかりしている』って」

青「面白い例えだな、それ」

緑「でしょー? 黄くんが言ったんですよぉ」

赤「え、黄が!?」

青「何も考えてなさそうなのに?」

緑「青先輩、当たり強いですねぇ」

青「きのこの民は敵だからな」

緑「そうでしたねー」

赤「え、緑、それ本当なのか?」

緑「はい。黄くんあぁ見えて結構、本読むんですよ。だから、話してるといろんな表現が出てきて楽しいですよ~」

赤「へぇ、意外」

青「ま、人は見かけによらないって言うしな」

緑「そーですそーです。見た目だけで判断しちゃだめなんです。さっきの話も、見た目や年齢で大人かどうかっていうのは決まらないと思うんですよー。中身が成長しているかどうかが問題だと思います」

赤「なんか、すごい納得できた」

青「あぁ、わかりやすかったよな」

緑「え~、褒めても二酸化炭素ぐらいしか出ませんよぉ」

青「酸素も出るだろ」

赤「いや突っ込むところそこじゃないから!」

緑「確かに~」

赤「でも、本当にわかりやすかったな。緑、教師に向いてるんじゃないか?」

緑「……そうですね。検討します」

青「緑?」

緑「でも僕、教育学部じゃないですよぉ」

赤「えっ、あぁ、そうだったな」

緑「教育学部以外でも、教員免許って取れるんですかねー?」

赤「あー、どうだろ。よくわかんねえな」

 赤、緑、談笑
 青、準備に入る

 舞台、シーリングのみになる
 黄、客席後方から入場。スポットは黄を追う
 誰かと通話しながら前方へ

黄「……あー、もしもし、白先輩? なーにやってんすか。もうすぐ、赤先輩の誕生日パーティー、始まりますよ。……あー、はいはい。俺、あと三分くらいしたらそっち着くんで、身支度済ませて、待っといてください。……え? 早い? 自業自得じゃないっすか」

黄、客席前方のドアからはける
スポット消える

 舞台、最初の照明に戻る

赤「青って、本当に学年一位だったのか?」

青「あぁ。それがどうかしたのか?」

赤「いや、さっき『俺の国語力の無さを知らないのか!?』とか言ってただろ? それで、国語力ないのに、なんで問題解けたんだろうって思って……」

青「あー」

赤「もしかして、赤点回避したのが青だけだった……とか?」

青「いや、さすがにそれはない」

赤「だよね」

青「全教科40点越したのが、俺だけだったんだ」

赤「大して変わらなくないか!?」

青「だから、赤の予想はニアピンだ。おめでとう。ニアピン賞にこのゴミをやろう」

赤「いらないし嬉しくない!」

緑「青先輩、よく大学入れましたね」

青「あぁ。俺が一番驚いた」

赤「なーんだ。じゃあ納得できた」

青「そうか。なら、このゴミもやろう」

赤「だからいらないって!」

緑「でもー、国語できないって、ヤバイですよねぇ、将来的に」

赤「だなー。黄見習って、本読めば?」

青「んー……オススメとかあるか?」

赤「オススメ? そうだな……」

 赤と青が話しているときに、緑、携帯を取り出しメールを確認する

緑「先輩、黄達もうすぐ着くそうです」

赤「おー、早かったな。ちなみに今、何時何分?」

緑「えっと……23時50分です」

赤「うわ、あと10分じゃねーか。早く帰って来いよー! 赤様の生誕祭が開かれるぞー」

青「お前はカミなのか?」

赤「我は神である!」

青「ちなみに、ペーパーの方な」

赤「なんで!? そこ普通ゴッドの神じゃないの!?」

青「は!? お前が神とか神様に失礼だ謝れ!」

赤「なんで俺怒られてんの!?」

 黄、白、上手から登場

黄「たっだいまー!」

緑「あ、おかえりー」

白「遅れて悪かったね! 本日の主役、白様の登場だよ☆」

赤「いや、今日の主役お前じゃねぇから」

白「え? じゃあ明日?」

赤「明日はもっとないから!」

黄「あっ、白先輩にも聞いてみませんか?」

赤「え? あぁ、あれね」

白「ん? 何だい?」

赤「白はさ、いつからが大人だと思う?」

白「おとな?」

赤「そう、大人」

白「んー」

赤「んー」

白「ん~?」

赤「ん~?」

白「わからない☆」

赤「わからんのかい!」

白「そんなの考えたこともなかったよ。僕は、毎日を生きるのに、忙しいからサッ☆」

黄「あー、俺も同じっす! 今日を生きるのに精いっぱいで、明日のことなんて考えられないっす!」

青「お前はただの馬鹿じゃないのか?」

黄「俺は馬鹿じゃないっすよ。赤先輩より」

赤「君は、先輩に対する敬意ってもんがないよね」

黄「そんな堅苦しいもの、どぶに捨ててきました!」

赤「今すぐ、拾ってきて方が良いと思うよ」

白「同感☆」

黄「うっ……俺への当たりが強い……」

青「ほらそこ、お喋りしてないで準備するぞー」

黄/白「「はーい」」

 赤、上手にはける
青、黙々と机上の準備をする
緑、黙々と飾りつけをする
黄、黙々と漫画を読む
白、黙々と鏡を見る
赤、ケーキをもって上手から登場

白「鏡よ、鏡。世界で一番美しいのは誰だ? え、僕? やだなぁ、そんな当たり前のこと、わかってるよ☆」

赤「うわ、青の予想当たってんじゃん」

白「ん? 何か言ったかい?」

赤「何もー。ていうかお前ら、準備しろよ」

白「してるよ? 身なりの準備を☆」

黄「俺は、心の準備っす!」

赤「白は家でやって来いよ! つか黄の心の準備ってなんだ!?」

黄「え、マンガ読んで、テンション上げとこうかなーって」

赤「お前は常にテンション高いだろ!? じゃなくて、俺が言ってんのは、この部屋の準備!」

白「ここにいる僕等だって、この部屋という空間を構成する一部だろう? 部屋を飾り付けるなら、まずここに存在する僕等を飾り付けなくちゃね☆」

青「白、屁理屈言うな。黄みたいになるぞ」

黄「白先輩、たけのこ派の言うことを聞いちゃダメっすよ」

緑「まだそれ続いてたんだねぇ」

白「んー、よくわからないけど、僕は、僕を貫くよ☆」

赤「変わらないなぁ、白は」

白「ありがとう☆」

 間

緑「そう、みんな、結局は変わってないですよね」

赤「緑?」

緑「……ねぇ、先輩。いつまで続けるんですか?」

赤「え、何を?」

緑「この『カラーサークル』を、ですよ」

青「緑、その話は」

緑「わかってますよ。今こんな話をする時じゃないってことくらい。でもですね、僕は、今だからこそすべき話だと思うんですよ」

白「どうして?」

緑「リーダーで、このカラーサークルをつくった赤先輩が、二十歳になってしまうから。……大人に、なってしまうから。人生の大きな区切りを迎える今だからこそ、この話をするべきじゃないんですか?」

赤「緑……」

緑「思えば、このサークル不思議ですよね。お互いに本当の名前で呼び合わないし、それどころか本当の名前すら知らない。大学構内で見かけた時は目も合わせないのに、それぞれの誕生日を祝うくらい仲がいい。本当に、歪な関係ですよね」

赤「……あぁ、歪だ」

黄「でも、だから、居心地が良かった」

赤「黄?」

黄「このサークルはいわば、リハビリテーションみたいな所っす。周りに上手く馴染めなかった人達が集まって、変わろうってしてますから」

白「でも、そんな簡単に自分を変えることはできない。変わらない自分をメンバーに見せたくなかったから、他の所で会っても、知らないフリをした」

青「変わりたいのに変われない。過去を乗り越えられないから、俺達はずっと、子供のままだ」

緑「ねぇ、先輩。もう時間はないですよ」

赤「……今、なのか」

緑「えぇ。逃げてばかりじゃ、前に進めませんから」

黄「話しましょう。みんなで」

白「過去のことも」

青「このサークルのことも」

赤「……あぁ。わかった」

 暗転
 黄、赤は上手にはける
 緑は下手にはける
 白は上手側の立ち位置にスタンバイ
 青は下手側の立ち位置にスタンバイ



上手のスポットがつく

白「僕は、自分が嫌いだった。どうして皆みたいに上手くできないんだろうって、自分と他人を勝手に比べて、自分は、出来損ないだと決めつけて、自分を嫌っていた。自分を愛さない人は誰からも愛されないから、自然と人は離れていった。このままではダメだと思って、このサークルに入って、自分を愛する『白』を演じた」

 上手のスポット消える
 下手のスポットつく
 白と黄が交代

青「俺は、不良だった。酒飲んだり喧嘩したり、自分のことばかり優先してやった。だから、親のことなんて考えてなかった。久々に家に帰ると、母が泣いていた。それを見て俺は、変わることを決めて、大学に入った。そして、このサークルで、真面目で冷静な『青』を演じた」

 下手のスポット消える
 上手のスポットつく
 青と緑が交代

黄「俺は……僕は、生真面目でした。ルールを破る人が嫌いで、口うるさく注意をしていました。お陰で、友達は誰一人としていませんでした。自分は間違ったことをしていないと思う反面、規則を守ることが全てではないのかもしれない、とも思っていました。だから、このサークルに入って、お調子者の『黄』を演じました」

 上手のスポット消える
 下手のスポットつく
 黄と赤が交代

緑「僕は、心配性でした。先の見えない未来に怯えて生きていました。『教師になる』という夢を持っていましたが、周囲から『未来に怯えるお前に、未来を支える仕事は向いていない』と言われ、諦めました。けど、せめてこの性格だけは変えたいと思っていたので、サークルに入って、落ち着いている『緑』を演じました」

 下手のスポット消える
 上手のスポットつく
 緑、下手にはける

赤「俺は、普通がわからなかった。周りに合わせることが苦手で、クラスでいつも浮いていた。だから、大学に入ったら『普通』になろうって決めた。一人じゃ頑張れる気がしなかったから、このカラーサークルを作った。名前で呼び合わないのは、なりたい自分を演じるため。俺は、俺の中でスタンダードなイメージがある『赤』を演じた。だけど、俺は今でも変われていない……」

 上手スポット、フェードアウト



 五人、元の位置について明転

赤「みんな、色んな過去を抱えてたんだな」

緑「だから、カラーサークルに入ったんですよ」

青「変われてないけどな。俺は夜中にバイクで走り回ってるし」

白「僕は自分が嫌いだし」

黄「僕はルールに縛られてるし」

緑「僕は明日が怖いし」

赤「俺は『普通』がわからない……」

黄「変わるって、難しいですね」

青「それに、知らない色に染まるみたいで、怖ぇよな」

緑「でも、僕達は染まらなくちゃいけないんですよ、理想の色に」

赤「大人になる前に、な……」

 間

白「でもさ、何かを染めるって、時間がかかるよね」

緑「え?」

白「布にしても、絵にしても、急いで染めても良い物は出来ない。丹精込めて、丁寧に染めるから、綺麗に仕上がるんじゃないのかな」

赤「白……」

アラーム音

黄「うわっ!?」

青「なんだ!?」

赤「あ、アラームかけてたんだった」

黄「何のですか!?」

赤「えっと、誕生日まであと二分っていう……」

青「嘘だろやべぇじゃん!」

白「手伝うよ」

緑「飾りつけぇ……」

青「あっ、ライター!」

黄「俺取ってきます!」

 黄、上手にはける

緑「……だいたいでいいかもなぁ」

 黄、上手から登場

黄「どうぞ!」

青「ありがとう!」

 青がケーキのロウソクに着火する動きをしたら、前からケーキにスポットをあてる

黄「あと一分!」

白「電気、消していいかい?」

青「あぁ!」

照明、落とす
前からのスポットはついたまま

青「はぁ、なんとか間に合った……」

緑「グダグダですけどねぇ」

黄「つーか、結局、どこからが大人なんすかね」

青「そもそも、大人になるってどういうことだろうな」

白「さぁね。その答えは、自分で見つけていかないと」

緑「この先、まだ長いですからねぇ」

青「そうだな」

黄「あと三十秒!」 (黄はここからカウントをする)

赤「なぁ。みんなはさ、ずっと子供のままでいたい?」

緑「……そうですね」

白「叶うなら、って感じかな」

青「赤は?」

赤「俺も、できることなら、ずっと子供のままでいたいよ」

青「……そうか」

黄「あと5秒!」

赤「でも」

黄「4!」

赤「今は」

黄「3!」

赤「前より」

黄「2!」

赤「少しだけ」

黄「1!」

赤「大人になるのが、楽しみだ」

黄「せーのっ!」

青/黄/緑/白「「「「赤、誕生日おめでとう!!!!」」」」

赤「……ありがとう!」

 赤、火を吹き消す
 同時にスポット消す

閉幕
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。